国境に沿って鉄条網がつづいていた。道はその脇を延びていた。一キロほど走っただろうか。道は二股になり、そこに最初のチェックポイントが設定されていた。僕らのパスポートと車のトランクのチェック……。一般的な検問だったが、それが終わっても運転手は車を出そうとしなかった。もっと本格的なチェックが待ち受けているのだろうか。僕は車から降り、パキスタン側にそびえる岩山を眺めていた。検問所の兵士の話では、最近、この付近で戦闘が起きたという。
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パキスタンから密輸団が越境を試みたのだろうか。三十分ほど待だされた。運転手に促されて車に戻った。彼はほとんど英語が話せなかったが、ひとりが「エスコート」といった。「エスコート?」顔を見合わせた。いったい誰が、誰をエスコートするというのだろうか。日本人の感覚でエスコートというと、男性が女性に付き添うようなニュアンスが強いが、国境に近いこの検問所にいるのは、髭面のイラン人兵士だけなのである。……ということは僕らを?その通りだった。僕らの車の後を、銃を持った兵士が乗るジープが追走したのである。これを喜んでいいのか僕にはわからなかった。治安が悪い一帯だから兵士が護衛してくれると考えたらいいのだろうか。しかしどうしてもその先になにかがあると勘繰ってしまうのである。